君をおもえば

近畿のおふたりのこと

2つの「ボク羽根」

私のKinKiストーリーはボク羽根からスタートしました。
(多分ほんとはフラワーあたりでも触れているのだが明確ではないしフラワー期のルックスを知らなかったので、ボク羽根ということにします)

 

 

ボク羽根といえばロシナンテ。そして、あの塔のPV。剛くんの前髪長めな黒髪。FFのクラウドか?!みたいな光一くんのド派手な金髪。こんなにまっきんきん(表現古)にしてるのに本人にチャラさとか一切なくて好感度一気にかっさらっていっちゃうじゃああの金髪時代のコンセプトは何やったんや…??もしかしたら剛くんの奇抜な髪型よりも、その辺無頓着な光一くんの金髪の方が謎深いんじゃ…?!(王子=金髪ってことからの金髪だったのでしょうが)どっちにしろあの非現実的な雰囲気をオタク的には激推しできる。

私光一くんのこときれいなオッサンだと思ってるからいじること多いと思うのですが愛ゆえなのでどうかご容赦ください…!!!

 

 

まあそんな感じでボク羽根。あのイントロを聴いて、PVの冒頭を観る度に、歌声が聞こえてくる前に、毎度胸がぎゅっとなるのを感じます。
けど、20代そこそこの男の子2人が歌うにはあまりに哀愁だだ漏れの曲調でありながら、歌詞をちゃんと知ってみると(いやタイトルからも判断できますが)本当は希望を歌った曲なんですよね。でも、あの曲がリリースされた当時の彼らが歌うと、まだその希望は掴みきれてはいない、道程の中を行く青年というかんじ。

 

まさに2人を表したような歌だからこそ、本当にこの曲を聴く度に、胸に迫るものがあります。
KinKiを好きになった2017年の年の暮れ、帰郷し、雲に覆われた黄昏時の空を見上げながらこの曲を聴いた時、思わず涙してしまいました。

 

 

数日前、作曲者である織田哲郎さんが歌う動画を視聴しました。
大変恐縮ながら、私はKinKiを機に織田さんを知り(KinKiきっかけで知った大御所の方々がとても多い…)音楽家として生命線である声帯を狂わされるような経験を乗り越えたという方ということで、そのような方の歌声をこのように聴けるということ、とても感慨深いものを感じられます。ボク羽根は2001年リリースで織田さんが事件に巻き込まれたのは前年だったので、事件のことを軸にお話しするのは非常に心苦しく思いますが、この歌を作曲したのが事件前後とすると、曲にかける想いも並々ならぬものだったと思います。

 

織田さんが歌う「ボク羽根」を聴いた時、見えた景色がKinKiとは全く異なるものでした。

 

 

KinKiはそもそもPVがあったので、2人のボク羽根を聴くと、PVの映像がリンクします。塔、海、夕刻の寒空の下。空を見つめて約束を交わすけど、もろくて、今にも壊れてしまいそうな繊細さ。
KinKiは「この曲が自分たちのターニングポイントとなった」と度々発言し、確かに音楽的にはそうだったのだと思いますが、まだ2人の硝子っぷりは引き継がれたまま。(もちろんその儚さが、当時の彼らの持ち味であり、魅力だと思います)

 

でも、織田さんの「ボク羽根」を聴いた時。

どこか遥か彼方の国にある、標高が高く、人気(ひとけ)のない山を登っている、そんな情景が浮かびました。

草木もほとんど生えず、岩だらけの山。目の前には大きな夕日。はっきりとした目的地は分からないけれど、歩みを一歩、一歩と踏み進めていく。

 

 

 

「嘘じゃないよ」

もしかしたらKinKiの歌うこのフレーズは、その時の自分たちは永久を誓いながらも、それは若気の至りで、結果的に見たら一過性の情熱から告げた、そんな若者の言葉を代言したようなものだったのかもしれません。KinKiがどうだという話ではなく、若いときに見える「永遠」とか「未来」なんてものは、そんな先のことでもないし、今の自分全てがあることが前提の話。でもそれは不可能なわけで。

 

だけど織田さんが歌うと、本当にその先の生涯、一緒にこの人と歩いていくような、固い絆を感じました。酸いも甘いも乗り越えてきた、少し乾いたがっちりとした手を、互いに握りしめ合うような。だってもう、自分の限界とか、そういうものを全部知り尽くし、悟った上で、こう語りかけてくれているのだからと。声を伸ばす範囲が限られてしまったであろうその歌声が、ますますその誓いを強固にしているようにも感じられます。

 

 

 

だけど若いときの「永遠」も、歳を重ねて結ぶ「約束」も、どちらもその一瞬や未来を輝かせるものなんじゃないか、と思います。この世にまたとない名曲だと、深く実感しました。